「愛」と「悲しみ」を知るために、人は生まれてきたのかもしれないね。
どちらも心の奥深くに確かに存在していて、事あるたびに痛むモノ。
男と女が恋をして、
やがて愛＝生命を生み、
その生命はこの世という宇宙で我々の悲しみと出会う。
人は死にゆくまでにいくつの涙をこぼすのだろう？
ＴＶをつけてごらん？世界中の人が悲しみに暮れている。
飢餓に、戦争に、病に倒れた孤独な瞳がブラウン管に向かって
声にならないメッセージを発しているのが見えるかい？
「愛してほしい・・・」
俺にはそう聞えるよ。

そして「ＡＩＤＳ」。
世の中に存在する多くの悲しみの中で、今一番俺たちに近い脅威。
世紀末に生きる俺たちにとっては、来るべくして来たとも感じさせる神の仕打ち。
メディアが連日コメントを繰り返すように「ＡＩＤＳ」に対する認識を高め、
できる限りの予防をして自分の身を守っていくことが、
他人をも守るということは、常識として浸透しはじめたかもしれない。
だけど自分だけが不幸から逃げられればそれでいいのだろうか？
自分だけが幸せになればいいのだろうか？
いや、願わくばすべての人が幸せであってほしいと思いたい。
隣人の笑顔が自分にも喜びを与えてくれることを俺たちは知っているから。
誰かに愛されるためではなく、
誰かを愛するために生きていこう。

布袋寅泰

今さらエイズについて書くなんて変だと思われるだろう。
確かに今ではもうみんなこの不治の病について知っている。
エイズで死んだ有名な人たちについてもみんな聞いたことがあるだろう。
エイズにかかるのは、セックスをしたり輸血をしたりするのと同じくらい
簡単だということも、知っているはずだ。
まるで誰かを見ただけで、エイズにかかってるかどうか、わかるみたいに、
エイズはホモセクシュアルの人だけがかかる病気だとか、
不道徳な人だけがかかる病気だとか、
考えるほど無知な人はもういないだろう。
エイズにかからないために、そうすればいいか、
今では確かにみんな知っている。

またエイズにかかっている６０才のカップルや
２０才の母親について読んだり聞いたりしたことがあるだろう。
彼らは皆、自分はなんとなくちがうからそんなことになるはずがない
と思っていたと言っていないだろうか？

エイズ患者を見、
普通の人たちを見る時、
エイズに軽蔑を感じ、
自分もまたエイズにかかる可能性のある普通の人間だと思っていないということが、
今でもなお、私達のエイズに対する態度にみられる問題ではないだろうか？

ＭＩＫＥ ＥＤＷＡＲＤＳ
ＡＩＤＳ ＰＩＥＣＥ
（マイク・エドワーズ エイズ・ピース）