“Hotei's Battle Without Honor or Humanity
was essential to the world of Kill Bill.”

by QUENTIN TARANTINO


2004年、布袋寅泰のオリジナル作品が遂に世界発売された。そして、ギタリスト・布袋寅泰、はじめてのギター・インスト集である。1999年に世界15ケ国で発売されたアルバム「SUPERSONIC GENERATION」は残念ながらイギリスでの発売まではいたらなかったが、この「ELECTRIC SAMURAI」はイギリスで最初にリリースされたのである。2003年のアルバム「DOBERMAN」のツアーで発表されたBRIAN SETZERとバンドを組んで世界に挑戦するという宣言もあり、世界でギタリストとして活躍して欲しいと願うファンには本当に嬉しい出来事であった。

もちろん世界への切符となった曲は坂本順治監督「新・仁義なき戦い」への出演および、そのテーマ曲である。クエンティン・タランティーノからの映画「KILL BILL」で使いたいというオファーが来たことにより、世界中で"Battle Without Honor or Humanity"が鳴り響き、世界中の人の耳に届き記憶されることになった。ちなみに、この英語タイトルはタランティーノによるものである。なお映画「キルビル」だけでなく「カンフーパンダ」の予告編、「トランスフォーマー」「シュレック3」などでも使用されており、海外の様々なメディアにおける使用頻度も高い。日本国内では、もともと布袋楽曲はたくさん使われてはいるが、とくにこの"Battle Without Honor or Humanity"は流れない日はないくらいの頻度で使用されている。

布袋寅泰のギタリストとしての思い、音楽にかける思い、世界への思いはCD封入のブックレットにあるテキストに全て込められていると思うので、あえて全文転載しておきました。"NOBLE SAVAGE"とは"高貴な野蛮人"の意味でこの作品のサブタイトルにもなっている。

NOBLE SAVAGE
 三島由紀夫の「若きサムライのために」という熱きエッセイの中に「NOBLE SAVAGE/高貴な野蛮人」という言葉を見つけた。この言葉は常日頃私がこうありたい、と思う気持ちそのものである。 高貴であることと野蛮であることは正反対の意を持つがこの二つの精神のど真ん中にこそ男であることへの真意が隠されていると私は確信している。
 私の音楽家としてギタリストとしてのユニーク且つ唯一無比なところは「バランス感覚」であり20年を越えるキャリアは常にポップとアバンギャルドの試行錯誤であった。 本音とジョークが入り交じった、一見チープな世界に見えるギリギリのところでオーディエンスを翻弄してきたが故に、評論家たちにチャート狙いの商業ロッカーと見下されるのは自業白得であると同時に私の思うつぼでもある。 音楽を奏でる時、誰かに伝えたいという気持ちと同時に、誰にもに判るはずがない!という天の邪鬼な気分がいつも同居している。 実際に私の音楽的背景はかなり変わっていてマーク・ボランの格好をしてレイ・パーカーのカッティング・スタイルでギタリストとしてクラフトワークに加入したい!などと本気で思っていたのが17歳の頃。 ギターを手にしたものの、当時皆がコピーしていたDEEP PURPLEやLED ZEPPELINをコピーする気にはならずジャーマン・プログレとシャンソン、デヴィッド・ボウイとビリー・ホリディ、エルビスとモリコーネ、マイルスと笠置シヅ子を同軸で聴いてきたし、 その後のパンク・ムーブメントに関してもこの世で最もインテリジェントな音楽として解釈したし、誰かと音楽論を交わしても熱くなるようなことは無かったし、どう考えても相当なひねくれた音楽ファンだった。 BOØWYというバンドもサクセス・ストーリーばかりが語られがちだが、結成当時から音楽、イメージ共にギリギリの線を敢えて狙っていたバンドであり、一世を風廓したその瞬間は笑いが止まらなかった。 「何故その音を奏でるのか?」と間われれば「誰も奏でないから」と答えることに至上の喜びを感じないなら、それはもうアーティストとは呼べない。 唯一無比であることがすべてだ。
 しかしそれだけでは私はただの変わり者。私の「バランス感覚」を満たすもう一つの側面は、私が夢追い人であることだ。 私の書斎には大きな地球儀がある。指先で地球を回すのが趣味である。 日本、とりわけ東京という街は間違いなく世界屈指のメトロポリスであるにも関わらず、そこに暮らす人々はコスモポリタンとしての意識の薄い孤立した人種だ。 ことアジア諸国に対しては白分達がNO.1であることを疑わないが、欧米に対しては未だ強い憧れを抱いている。ファッション、音楽、アート、文学...etc。 自分達がオリジナルではないというコンプレックスからか「全米NO.1」という言葉にめっぽう弱く、イギリスの新人バンドにはデビューする前からグルービーがつく。 私がギターを弾きはじめた頃からE.CLAPTONは神と呼ばれていたし、神には誰も背けないという謙遜の裏側には確かなる欧米至上主義が根付いていたように思える。 洋楽のような邦楽はカッコよく、アジアの者楽はまがい物だと信じているのが本当にクールなのか? 休暇でハワイを選ぶ人が多い理由に「そこは海を越えても日本だから」という安心感が絶対的にあると思う。 我々はそこまで冒険心の薄い保守的な人種だったのであろうか? などと思いながら地球儀を回すと、身体の奥から何か熱いものが込み上げてくる。 その普七つの海を渡った男たちの伝説や、鳥になりたい一心で大空を飛んだ男たちの物語。 以前対談の最中「冒険こそが人生だ」と語ったリチャード・ブランソンの瞳に猛烈に嫉妬した自分を私は忘れてはいない。 照れてもしょうがない。告白しよう。世界でギターを弾くことが私の『夢』だ。
 その『夢』はプロとしてデビューして20数年経った現在も私を支え、時に叱咤し、未来へと導いてくれている。 今回このような形で英国と韓国に向け作品を発表するに至り、また新たな扉が開いたという実感と、白分の人生が変わるという予感で胸が躍る想いだ。 結果などいらない。世界でギターが弾けるのなら何でもするだろう。バンドのライブに客が入らなかった時期、街頭でチケットを売った自分は恥ずべきどころか誇らしかった。 何故なら白分達に絶対な自信を持っていたからだ。そして今、10代の頃のようながむしゃらなパワーは失ったかもしれないが、自分の音楽(ギター)を信じる気持ちはピークに達していると言っても過言ではない。

 この作品で『サムライ』という言葉を使った理由に刀とギターの精神的類似性が挙げられる。 私の刀はギターであり、三島の書いた「NOBLE SAVAGE/高貴な野蛮人」というイメージが今もなお西洋人の中に根付いているのであればなおさらの事、東洋のロックンロール・スピリットを剣先に込めて彼等に突きつけ、静かなる宣戦布告としたい。 物騒な言い方だが私は本気で『夢』を叶えようとしているのだ。

 最後に私にチャンスを与えてくれた映画監督クエンティン・タランティーノに感謝したい。 同様にKILL BILLでの使用を快く承諾してくれた阪本順治監督と、私を映画の世界に導いてくれた中野裕之監督にも感謝と尊敬を。 そして私以上に才能に恵まれた若きミュージシャン達の夢もまた、いつかきっと叶うことを願って。人生は一度きりだ。

布袋寅泰

収録曲は全て過去の作品からセレクトされたものであるが、サウンドトラック「SF」の"予感"のみ"DARK WIND"という英語のタイトルに変更されている。全曲デジタル・リマスタリング。
01.BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY
music: TOMOYASU HOTEI
02.KATANA GROOVE
music: TOMOYASU HOTEI
03.JINGI
music: TOSHIAKI TSUSHIMA
04.KILL THE TARGET
music: TOMOYASU HOTEI
05.IMMIGRANT SONG
lyrics,music: JIMMY PAGE,ROBERT PLANT
06.BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY #2
lyrics & music: DAVID SILVIAN/GEORGE MORDER
07.FROZEN MEMORIES
music: TOMOYASU HOTEI
08.BELIEVE ME,I'M A LIAR
music: TOMOYASU HOTEI,DARREN PRICE
09.BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY #3
music: TOMOYASU HOTEI
10.DARK WIND
music: TOMOYASU HOTEI
11.SPACE COWBOY
music: TOMOYASU HOTEI
12.METROPOLIS
music: TOMOYASU HOTEI
13.HOWLING
music: TOMOYASU HOTEI
14.FETISH
music: TOMOYASU HOTEI
Produced by TOMOYASU HOTEI
Digitally Re-mastered by IAN COOPER @ Metropolis Mastering

01.BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY
TOMOYASU HOTEI - Guitar,Bass,Keyboards
TOSHIYUKI KISHI - Programming,Audio Edit
YOICHI MURATA - Horn Arrangement,Trombone
TOSHIO ARAI/MASAHIKO SUGASAKA - Trumpet
KUNIHIKO IMAI - Recording & Mixing Engineer

02.KATANA GROOVE
TOMOYASU HOTEI - Guitar,Keyboards
TAKESHI FUJII & NOBUTAKA WATANABE - Programming
SYOUGO SUZUKI - Voice Sample
KUNIHIKO IMAI - Recording & Mixing Engineer

03.JINGI
TOMOYASU HOTEI - Guitar,Bass,Keyboards
TOSHIYUKI KISHI - Programming,Audio Edit
YOICHI MURATA - Horn Arrangement,Trombone
TOSHIO ARAI/MASAHIKO SUGASAKA - Trumpet
KUNIHIKO IMAI - Recording & Mixing Engineer

04.KILL THE TARGET
TOMOYASU HOTEI - Guitar,Bass,Keyboards
TOSHIYUKI KISHI - Programming,Audio Edit
YOSHIFUMI IIO - Recording & Mixing Engineer

05.IMMIGRANT SONG
TOMOYASU HOTEI - Vocals,Guitar,Bass,Keyboards
NOBUTAKA WATANABE - Programming,Audio Edit
ZACHARY ALFORD - Drums
JEFF PATTERSON - Backing Vocals
KUNIHIKO IMAI - Recording & Mixing Engineer

06.BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY #2
TOMOYASU HOTEI - Guitar,Bass,Keyboards
TOSHIYUKI KISHI - Programming,Audio Edit
KUNIHIKO IMAI - Recording & Mixing Engineer

07.FROZEN MEMORIES
TOMOYASU HOTEI - Guitar,Keyboards
TOSHIYUKI KISHI - Programming,Audio Edit
HIDEO YAMAKI - Drums
TOMIO INOUE - Bass
KUNIHIKO IMAI - Recording & Mixing Engineer

08.BELIEVE ME,I'M A LIAR
TOMOYASU HOTEI - Vocals,Guitar,Bass,Keyboards
DARREN PRICE - Programming
JEFF PATTERSON - Backing Vocals
KUNIHIKO IMAI - Recording & Mixing Engineer

09.BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY #3
TOMOYASU HOTEI - Guitar,Bass,Keyboards
TOSHIYUKI KISHI - Programming,Audio Edit
KUNIHIKO IMAI - Recording & Mixing Engineer

10.DARK WIND
TOMOYASU HOTEI - Guitar,Keyboards
TAKESHI FUJII - Programming
KUNIHIKO IMAI - Recording & Mixing Engineer

11.SPACE COWBOY
TOMOYASU HOTEI - Guitar,Bass,Drums
TOSHIHARU UMEZAKI - Programming
KUNIHIKO IMAI - Recording & Mixing Engineer

12.METROPOLIS
TOMOYASU HOTEI - Guitar
TAKESHI FUJII - Programming
MICHAEL ZIMMERLING - Recording & Mixing Engineer

13.HOWLING
TOMOYASU HOTEI - Guitar
TOSHIYUKI KISHI - Programming,Audio Edit
CHIEKO KINBARA STRINGS - Strings
KEN SHIMA - Strings Arrangement
KUNIHIKO IMAI - Recording & Mixing Engineer

14.FETISH
TOMOYASU HOTEI - Guitar
MIKE GARSON - Piano
ZACHARY ALFORD - Drums
BANANA-U・G - Synthesizer
STEVE WALTERS - Bass
TOSHIYUKI KISHI - Programming,Audio Edit
YOICHI MURATA - Trombone
STEVE SIDWELL & SIMON GARDNER - Trumpet & Flugel Horn
DAVE BISHOP - Saxophone
KUNIHIKO IMAI - Recording & Mixing Engineer