GUITARHYTHM III
TOCT-6658 
<'92.9.23>
コンセプトは、スピード、スリル、ワイルドである。
テーマは「LOOKING FOR WILD
前作に比べてシンプルな音数とスピード感で押しまくったアルバム。 といってもコードのR&Rが並んでいるわけじゃない。日本、イギリスの ハウスクリエーターからクリス・スペディング、アンディ・マッケイまで 多彩な才能が赤裸々に個性をぶつけあって加速していく、そんな作品である。”皮ジャンはロックンローラーの皮膚なんだ。”アルバムジャケットの写真 について語った布袋のその言葉が、作品の内容を代弁しているといえる。布袋のギターサウンドは、ZemaitisWildGretsch WHITE FALCONBurny H-CUSTOM、TE-HT(MAINSustainer付き)とピーヴィーの5150アンプで作られた。ライブでは大掛かりなラック・システムを使用する布袋であるが、このアルバムはアンプに直結してレコーディングされ、エフェクト関係はすべて卓上の作業で布袋自身はノータッチだったため、非常にソリッドなギターサウンドが楽しめる。
スリルとスピード。世間のいう不良とはきっと意味が違うかもしれないけど、俺たちって 本当に不良じゃない?愛すべき不良というか・・・・・。生活はデタラメだし、モラルも人 とはちょっとズレてるけど、何かに夢中になったらもう止まらない。突拍子もないことを 夢見てさ、傷つくことも少なくないけれど、いつもキラキラしていてさ・・・・。 そんな連中に聴かせたいの。出来過ぎのチャート追っかける奴らじゃなくてさ。 喜びを分かちあうのも音楽なら、痛みを分かちあうのも音楽だと思うの。”布袋 寅泰

1 MILK BAR PM11:00
music:TOMOYASU HOTEI
この曲は作った記憶がないんだよね(笑)朝9時くらいまで飲んでて、ヘロヘロになってそのままスタジオに入ってさ。テレテレやってたらできちゃってさ。で、違う日にバンドの連中が”今日は、あの曲からやろう”って言って、俺も”やろうやろう”と言いつつも自分で覚えてないっていうさ(笑)突っ走ってるワイルドさの中にドローンとしたワイルドさもあったりするし。もし、アルバムに合わなかったら入れなくてもいいって思ってたのね。でも、録ってみたら、みんないいって言ってくれてさ。とっても重要な曲のような気がしてね。結果的にマイケルの提案で1曲目になったんだけど。
本当はメロディはサックスにしたいって思っていたんだ。一応、ガイドでギター入れたら”OKテイクだよ”ってなっちゃって。
ギターはフェルナンデスのシャチ(プロトタイプ)でアームを使いながら弾いている。
2 UPSIDE-DOWN
lyrics:YUKINOJO MORI music:TOMOYASU HOTEI
この曲は俺の得意なところだね。コンピューターとギターのリフ、途中で展開が入って、みたいな。とにかくテーマはスピードでね。森さんの詞も、はじめは違う解釈で書いてきてくれたんだけどスピード感が足りないからって全部リライトしてもらってさ。
この曲はグレッチを使いたくて書いた曲だからさ。ほとんどホワイトファルコンで,途中で絡むワウがカントリー・ジェントルマンだったかな。
ソロにしてもなんかあまりにも自分らしすぎるんで、もうちょっと冒険したソロにしようかと思ったんだけど、逆に思い切って自分らしく行っちゃおうって。
3 DIRTY STAR
lyrics:YUKINOJO MORI music:TOMOYASU HOTEI
この曲のソロみたいなのは得意なんだよね。コードがどんどんでたらめな感じで展開していって結果的に最後で戻る、みたいなの。BOØWYの頃からそうなんだけど、作ったはいいが弾けない弾けない(笑)コードの脈絡がないからね。ほとんどジャズ的な動きをしてるし。これはずいぶんてこずったかな。
やっぱりどっか耳に残るソロじゃないと駄目なタイプなんだよね。俺にとっては歌のさびよりもギター・ソロのほうがサビだったりするからさ。ギタリストとしてその辺はどっか意識が働いちゃうよね。例えばカラオケなんかでもギター・ソロになると拍手になっちゃって、誰もソロなんか聴いてないってことに大体気付いているんだけど(笑)でも、やっぱりミュージシャンとしてのエゴっていうか、プライドをかけるっていうかね。
4 さよならアンディ・ウォーホル
lyrics:HIROSHI MORINAGA&HERBIE YAMAGUCHI music:TOMOYASU HOTEI
自分の中にあるグリッター感覚がよく出てる曲だね。ま、BE MY BABYなんかもそういう気分でやっていたんだけど、結果的にヒット・チューンになっちゃうと印象も変わったりするからね。これは、そんなヒット・チューンにならないと思うから。そのグリッター感覚っていうのは永遠に残ると思うんだ。
Aメロのリフはサンプリングでやってる。弾くと全然違う雰囲気になっちゃう。ライブでどうするかは、まだわからないけど、アンディ・ウォーホルのポップ・アート観みたいな意識でやったんで、あんまりへヴィにならないようにしようと思ってるんだ。
あとメインはやっぱりクリス・スペディングのギターだよね。やっぱり、60年代を意識したというので、彼に頼むことによってもう1つリアルが入るかなって期待感があってね。でも、実際は、”今時、アンディー・ウォーホルとは珍しい奴だな”って言われてさ。ま、それはそこで成し遂げられたって思うんだけど。ぼろぼろのレスポールJrを1本だけ持ってきて、それを使ってた。
5 DIVING WITH MY CAR[RED ZONE VERSION]
lyrics,music:TOMOYASU HOTEI
メンタルなワイルドっていうのがテーマでさ。車から出てきた曲でもあるんだけど。今まではエイト・ビートだったからずっとカッティングしてきたんだけど、シングルでは疾走感を出したくて初めは2本のギターをかき鳴らしてたのね。ミュートなし、カッティングなしでノリを出そうとしてさ。 でも煮詰まっちゃってノリが出ないんだ。だから、アルバムでは本来の自分のスタイルに徹してエイトで挑んだの。そしたらやっぱりノリが出てさ。結局そっちの方が得意なんだよね。花田君なんかはガーって弾いたほうがアメリカのトラック並みのスピード感が出せると思うんだけど。俺は日本車とは言いたくないけど、結構高性能な車って感じだよね。
ちょうど新しいポルシェ買って、それに首ったけでさ。乗りながら出来た曲なんだ。だから車に乗りながら聴くとすごい臨場感があると思うな。森永さんがこのテープを持ってモンゴルに行ったのね。で、ジープに乗りながらこの曲聴くとスゴイって。モンゴル人が飛ばす飛ばすって(笑)
6 PRECIOUS DEAL
lyrics,music:TOMOYASU HOTEI
このふたつのりフもサンプリング。自分で弾いてもあんまり変わらなかったんだけど。サンプリングすることになんか意識があるような気がして。このアルバム作るときに弾けても、サンプリングの方がいいっていうのが頑なにあってさ。でも、自分で弾いたものをサンプリングしてるからそのままの音で再生できるじゃん。同じセッティングで生も弾いてるわけだから、全部つながって聴こえてさ。どこがサンプリングだか、どこが生だかわからないっていう。そのサンプリングと生の音を近づけるってことに妙に賭けててさ。合理的にすべきじゃないところで頑張っちゃうみたいなさ。サンプリングは俺にとって合理的なものじゃないからね。面倒臭いじゃん。弾けなくてサンプリングしてるわけじゃないから。でも、そこは自分のスタイルとしてやらなきゃいけないことだ、みたいな。結構、梅崎君にも無理いって頑張ったね。
ブリッジ部のカタカタってところは難しかったけど、自分で弾いてね。でも、あそこはサンプリングしちゃいけないっていうギタリストの意地があってさ。練習とかはあまりしないんだけど、新たなトライアルをしていく度に一応超えなきゃいけないハードルをあらかじめ自分で決めるんだよ。”ここは乗り越えなきゃなんないんだ。決して諦めてはいけないんだ”ってね(笑)どこは結構頑なだよ。
で、結果的にうまくつながってるからすごく計算高く見られるかもしれないけど、実際は”おーっつながった”みたいな。こっちもたまげるような感じで出来上がったんだけどね(笑)
7 EMERGENCY
lyrics:YUKINOJO MORI music:TOMOYASU HOTEI
この曲のコンピューターは福富幸宏君。DJ連中もだんだん手法に走っちゃったりとか、音楽産業の一部になっちゃったりしてる時、たまたまばったり会っちゃった感じでさ。彼は俺のことずっと注目してくれてて、今回の方向ってのもすごく理解してくれたみたいでね。一緒にやってみて彼の才能には驚いたよね。ミュージシャン的っていったら彼は嫌がるかもしれないけど、感覚としてはミュージシャンなんじゃないかなあ。やっぱ、彼も俺もパンクを通ってきてるし、そのあとのハウスなり、ボディなりっていうフィルターがあるわけで。でも俺はギタリストってことでやめちゃってるから。もしギタリストじゃなかったら、絶対ハウスとかに行ってるだろうしさ。その辺の感覚でテーマが共有できたんでうまくいったと思うよね。
それと二ールXのギター。一発録りじゃないとつまらないんで、ふたりで一生懸命ツインギターのところ練習してさ。やっぱりニールはいいギタリストなんだよね。なんとなくアイディア先行の人に見られがちだけど、彼のアイドルはジェフ・べックだったりしてさ。テクニカルじゃないけどハズさないタイプのギターだしね。ツイン・リードを二人で練習するなんて高校生に戻ったみたいで楽しかったよ(笑)
8 ELECTRIC WARRIORS
lyrics:TOMOYASU HOTEI music:MIKE EDWARDS&TOMOYASU HOTEI
これは、マイク・エドワーズだね。もう好き勝手やってほしかったし、彼を信じていたしね。それがもしもジーザス・ジョーンズになっちゃってもいいやって思ってたし。そん時は彼の曲だって言いたかったし。でも、ふたりで作っていってお互い満足のいくものができたって思ってるよ。マイクはとにかく面白いやつだね。一番注目してるしさ。機材なんかは全然チープ、本当にアイディアだけで作ってるみたいな音楽だしさ。一緒にギターも弾いたんだけど、マイクはあんまりふたりでギターを弾くっていうタイプじゃないからね。で、結局全部自分で弾き直したの。そしたら自分のアルバムの音になったね。混沌としてるからどうなっちゃうんだろうと思いつつ、すげえワクワクしててさ。でも、彼はギターうまいよ。チューニングしながら手グセで弾いたりするじゃん。そしたらキュルルーンって。速弾きできるぜこいつ、みたいな(笑)とにかく一緒にやれてよかったねな。友達にもなれたしさ。
9 GUILTY
lyrics:YUKINOJO MORI music:TOMOYASU HOTEI
ここにきてちょっと落ち着くんだね。このカッティングはけっこう難しいんだよ。ぴったりジャストじゃないといけないリフだから。特に一発のカッティングって難しいよね。音が伸びてたり、次につながるとカッティングだったら自分でコントロールができるけど、この曲のようなのはそれこそ時間を切るようなカッティングだから。ま、最終的にはすごく気に入ってるけど。これはいつもテレキャスで弾いた。
10 I'M FREE
lyrics,music:TOMOYASU HOTEI
クリス・スペディングのスライドも全然打ち合わせ無しで一発なんだ。はじめはスライド無しで弾いてたんだけど、彼が”ちょっとスライド弾く”って言ってさ。俺は”オオッ、スライドが見れるぜ”みたいな(笑)ティッシュ・ペーパーを1fのところにはさんで弾いてたんだけどみっともないのね。ティッシュつけてるわ、裸足だわ、髪の毛はボサボサだわ、決してかっこいいギタリストではなくてさ。俺のイメージしてた皮ジャンにフライングVを持ってた人とはちょっと違ってて。でも、ギター弾き始めるとゾクゾクするくらいかっこいいんだよね。
ギター・ソロはクリスからで、俺もそれについていって、後半は俺から行かせてもらうぜって感じでね。それそれはもう弾く度にカッコよくてさ。レコーディングとは思えないような、ライヴのようなノリだったしね。フェイド・アウトにしようと思ってたんだけど、あそこまでいくと意味がないような気がして。少なくとも俺にとっては長くないしさ。気持ちよかったよ。花田君はいい意味で抑揚のきいたギタリストだし、今のバンドの成田さんは俺を盛り上げることに徹してくれてるしさ。あそこまで煽ってくれるギタリストってなかなかいなかったからね。で、結果的にすげえすがすがしい気分でセッションできたね。やっぱかっこいいギタリストはギターを持ったときにわかっちゃうんだよね。髪がボサボサでもさ(笑)
11 LONELY★WILD[UPPER VERSION]
lyrics,music:TOMOYASU HOTEI
これもシングルとはちょっと変えたいなって思ってね。リフとソロを両立させたいなって思ってて、リフを削ってソロを入れるっていうのはやりたくなかったからね。もうちょっと気持ちを、歌詞なりの気持ちをギターでもう少し伸ばしたいって思って入れなおしたんだ。
12 WILD LOVE
lyrics,music:TOMOYASU HOTEI
これは結果的にこういう曲になったけど、デモの段階だとずっとフィード・バックが鳴っててクレイジーな曲だったんだ。だけど、歌詞とか気持ちとかが重なってきて、ちょっと邪魔になってきちゃってさ。で、こういう曲になって。これは成田さんとやっててバッキングもソロも同時にふたりでやってるから。今の俺のバンドの音だよね。
テーマのモジュレーションっぽいとこはシャチでやってる。最近ああいうアームの使い方が好きでさ。ギューンといくんじゃなくて、ビブラートっぽくトローンとした。グレッチは何本か手に入れたんで、その意識も強いんだろうけどね。グレッチ独特のトローンとした感じあるじゃん。
小指をアームにかけておいて弾きながらクイクイやるってのを偉そうにやってるんだ(笑)
13 MILK BAR AM3:00
music:TOMOYASU HOTEI
日本で「MILK BAR PM11:00」の方を録った時にサックスを吹いてもらいたいなって思っててさ。で、あっちはギターのバージョンにして、アンディ・マッケイにこの曲を吹いてもらおうって。実をいうとアンディにもう一回会いたかったから。そのためにはこの曲しかなかったのかもしれない。失礼な言い方だけど、実際すごく会いたかったからね。アンディも快く引き受けてくれてさ。”これだけか?”みたいな感じで。一緒にランチ食べに行ったんだけど、グリーンのスーツ着ててさ。”ロキシー・ミュージックの人です”みたいな。側にいるだけでドキドキしちゃってさ。それまでできなかったような話もいろいろできてね。やっぱ、2回目にあったからこそ広がるような話もできたし。ライブも観に来てて”次も呼んでね”みたいな感じだったしさ。ゲストというよりもなんとなく気持ちの中ではつながってる人でね。だから、言い方は悪いけど、吹いてくれて当たり前なんだよね。
14 GUITARHYTHM[MUSIC BOX]
music:TOMOYASU HOTEI
手を変え、品を変えって感じだけどさ、なんとなく入ってないと寂しいんだよね。
ワイルドな男も眠るんだぜ、みたいなさ。それは「LONELY★WILD」に出てくる”独りのベッド”かもしれないし、真夜中に起きてミルク・バーにいるロンリー・ワイルドかもしれない。でも結局は眠るんだねっていう子守唄的なものにしたくてさ。初めは声で誰かに頼むか、さもなくばアカペラでって思ったんだけど、IIでいい形でやってるんでね。ぱっと閃いたのがオルゴール。きっと留守番電話に使われるんだろうなって思いつつ。
やっぱ、この曲があると、俺の気持ち的な問題なんだけど、なんとなくホッとするんだよね。テーマとしてさ。終わったねって感じするしさ。

11月18日に、完全予約発売で、アナログ盤「GUITARHYTHM III」(TOJT−6658)を発売。SUGAR BABY LOVEを収録した全15曲。
GUITARHYTHM III
PRODUCED BY TOMOYASU HOTEI

MUSICIANS
TOMOYASU HOTEI/GUITARS,VOCAL,KEYBOARDS & DRUMS PROGRAMMING.
KYOICHI SHIINO/DRUMS,PERCUSSION.
TAKESHI ASADA/BASS.
SHIGEO KOMORI/KEYBOARDS.
TOSHIAHRU UMESAKI/COMPUTER PROGRAMMING.
YUKIHIRO FUKUTOMI/COMPUTER PROGRAMMING.
CHRIS SPEDDING/GUITAR.
MIKE EDWARDS/GUITAR&COMPUTER PROGRAMMING.
NEAL X/GUITAR.
SHINOBU NARITA/GUITAR.
ANDY MACKAY/SAXPHONE.
ALAIN VAN de PUTTE/STRONG BACKING VOCAL.
CAROL LESLEY GREEN/OPERA VOICE.
TORU IIZUKA/PERCUSSION.


TOUR
[GUITARHYTHM WILD]