GUITARHYTHMシリーズの4作目。このアルバムがギタリズム最後のアルバムとなった(
2009年に復活)。ギタリストとしてだけでなくシンガーとしてソロ活動を続けてきた中で"歌うこと"に対する意識の変化がギタリズムというコンセプトからの脱却に結びついたようである。このアルバムでは、ギタリズム本来のコンセプトから離れ、コンセプトはなく、コンピューターもない。
GUITARHYTHM WILD TOUR終了後に何の予定も立てず、ただ"曲が出来るまでは戻らない、曲が出来てもデモテープは作らない"と宣言し単身でロンドンに渡った。シングル「さらば青春の光」をリリースした1993年の7月のことである。それから数ヶ月間続いたロンドンでの生活、まわりの国への旅を通して自然に生まれた楽曲によって構成されている。作ろうと思って作った曲は1曲もないという。
「デモテープは頭の中にある」・・・デモテープは作らず、フェンダーのWildwoodというアコースティックギター1本と向かい合い作り上げた曲は布袋の頭の中だけにあった。ロンドンに呼び寄せたギタリズムバンドメンバーの前でアコースティックギター1本で歌い、それをバンドメンバーで音を出しながら相談し、固まったところでレコーディング。レコーディング中は、スタジオの照明を落とし暗闇の中、蝋燭だけを灯し、ひたすら楽器と音と向き合い、一発録りに近い感じで作り上げていったという。GUITARHYTHM REPRISEから共に活動してきた成田忍、小森茂生、浅田孟、椎野恭一それぞれの個性が見える生バンドサウンド主体のアルバムである。
ギタリズムはギターとリズムによる造語であり、単語をひっくり返すとリズム・ギターにもなる。ギタリスト・布袋寅泰のファンは、リズムギタリストとしての布袋のプレイに魅了された人が多いと思うが、このギタリズム4では、リズムギタリストに徹している。このアルバムで主に使用しているギターはロンドンの楽器屋で値切って6万円ほどで購入したフェンダーのテレキャスター・カスタム。そしてアンプにマッチレスを導入した。
レコーディングに使用されたスタジオは、ロンドンのメトロポリス・スタジオをあえて選択せずに、観光地として有名なバースの近くのウィルトシャー州ボックスにあるリアルワールド・スタジオを中心に行われた。このスタジオは、ピーター・ゲイブリエル所有の世界でも最高峰のプライベートスタジオ。エンジニアとしてBOØWYからGUITARHYTHM Ⅲまで関わってきたMichael Zimmerlingはこのアルバムでは関わっていない。ミックスはスイスのマウンテン・スタジオで行われミックス・エンジニアをDavid BowieやQueenのプロデューサーを手がけたこともあるDavid Richardsが努めた。ミックスの際に同じくマウンテン・スタジオに居合わせたDavid Bowieが"薔薇と雨"を聴いて"Nice Song,HOTEI"と言ったことは布袋ファンには有名な話である。歌詞は全て布袋寅泰によるもので、曲作りの段階から歌詞も自然と出てきたそうである。布袋寅泰の全アルバムの中で作詞を自身で全て手かげているのは、この"GUITARHYTHM Ⅳ"のみである。
ジャケット写真はDavid Bowieの名盤「
ZIGGY STARDUST」にインスパイアされたもの。後ろ向きで振り返っている布袋と仁王立ちする布袋が"これまでの布袋寅泰"と"これからの布袋寅泰"を表現している。地面に写っている二人の布袋の陰が"IV"になっているのも見逃せない。なお写真の撮影は前作「
GUITARHYTHM Ⅲ」に引き続き久保木浚介によるもの。
アルバム収録曲のうち1曲目の"TIME HAS COME"はサイモン・ヘイルが手がけたが、この曲が彼がフル・オーケストラを手がけた初仕事であった。また、"SIREN"は花田裕之に提供した曲でプロデュースを手がけた花田裕之のミニアルバム「OPEN YOUR EYES」に収録されている。また、シングルで先行リリースされた『
さらば青春の光』、『
サレンダー』(カップリングのESCAPEも含む)の3曲はアルバムヴァージョンで収録。"薔薇と雨"は後に
シングルヴァージョンでシングルカット。アナログ盤のみElvis Presleyの"Crying in the Chapel"のカヴァーが収録され、この曲はGUITARHYTHM SERIOUS? TOURのエンディングテーマ曲として使用された。シングル「薔薇と雨」のカップリングとして収録。なおアナログ盤はCDと曲順が大幅に異なっている。