新・仁義なき戦い。そしてその映画音楽のジャケット
2000.11.29

新・仁義なき戦い。そしてその映画音楽 布袋寅泰

更新日:

TOCT-24530
【CD】【PR】
TOCT-95131
【SHM-CD】
2012年2月1日発売のボックスセット『HOTEI MEMORIAL SUPER BOX』に収録

映画『SF サムライフィクション』への出演に続き、布袋寅泰と豊川悦司の主演による映画『新・仁義なき戦い。』へ出演。こちらのサウンドトラックもすべて布袋寅泰が手がけた。映画主題歌は2001年1月1日にシングル『BORN TO BE FREE』でリリース。そして、このサウンドトラックに収録されている「新・仁義なき戦いのテーマ」が後に「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」とタイトルを変えて布袋寅泰の代表曲となる。振り返ると布袋寅泰の活動においてひとつのターニングポイントになったといえる作品。

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収録内容

CD

  1. 仁義なき戦いのテーマ [1:57]

    music: TOSHIAKI TSUSHIMA

  2. 新・仁義なき戦いのテーマ [2:28]

    music: TOMOYASU HOTEI

  3. 男の背中 [0:46]

    music: TOMOYASU HOTEI

  4. 運命の再会 [1:10]

    music: TOMOYASU HOTEI

  5. 黒の予感 [2:15]

    music: TOMOYASU HOTEI

  6. 忘れられない過去 [1:22]

    music: TOMOYASU HOTEI

  7. 陰謀 [3:25]

    music: SIMON HALE

  8. オトシマエ [2:34]

    music: TOMOYASU HOTEI

  9. 混乱 [0:52]

    music: TOMOYASU HOTEI

  10. 復讐という名の仁義 [1:39]

    music: TOMOYASU HOTEI

  11. 危機 [1:58]

    music: TOMOYASU HOTEI

  12. ○○○の世の中 [2:31]

    music: TOMOYASU HOTEI

  13. 最愛の友 [3:46]

    music: TOMOYASU HOTEI

  14. 永遠の別れ [0:53]

    music: TOMOYASU HOTEI

  15. 仁義なき戦い/愛のテーマ [1:33]

    music: TOMOYASU HOTEI

  16. BORN TO BE FREE(劇場版) [3:41]

    lyrics & music: TOMOYASU HOTEI

  17. 新・仁義なき戦いのテーマ/REPRISE [2:25]

    music: TOMOYASU HOTEI

  18. BORN TO BE FREE [5:24]

    lyrics & music: TOMOYASU HOTEI

アルバムの解説・感想

深作欣二監督「仁義なき戦い」のリメイクで阪本順治監督による映画「新・仁義なき戦い」のサウンドトラック。主演は豊川悦司と布袋寅泰。個人的には面白い作品だと思ったのだが、古くからの映画ファンや過去作品の出演者からの反応を見る限りではあまりよいとはいえず、さらに布袋寅泰ファンからも、映画出演自体に拒否反応を示す人も一定数いた。内容も任侠映画ということでスタッフサイドの懸念もあったようである。しかし、もともと豊川悦司ファンだった人が、この映画をきっかけに布袋寅泰の音楽やライブに興味をもつことになりファン層の拡大に一役買ったのもまた事実。以下にこの作品に関する布袋さんによるライナーノーツを引用しておく。

男たちの熱き戦いを奏でて

胸騒ぎのタイトル「新・仁義なき戦い」... まさか自分がこの作品に俳優として出演し、その上音楽監督まで引き受けることになるとは、想像したことすらなかった。しかし今となってはある種の運命じみたものすら感じる。というのも阪本順治という映画監督、そして豊川悦司という映画俳優、この二人の男との出逢いは自分の人生に於いてとても重要な意味を孕んでいると思えてならないのである。存じの通り私はギタリストである。寝ても覚めても音楽のことしか考えられないような男である。そんな男が映画の世界に命を賭ける男たちに挑むのは、ある意味で異種格闘技戦に名乗りをあげるに等しい大冒険であった。そして結果的に我が大冒険は大変意義のあるものになった。その成果はこのオリジナル・サウンドトラック「新・仁義なき戦い/そしてその映画音楽」という作品に形を変えたと言じているし、皆さんにも映画同様にこの作品を大いに楽しんでいただきたいと思う。この作品が生まれるまでのいくつかのエピソードを2000年の熱き思い出としてここに書き残しておきたいと思う。

阪本監督のデビュー作「どついたるねん」はすべての男にとってのバイブルであり、例にもれず私も男心を強く揺さぶられた輩だ。他の作品も改めて観させてもらったが、どの作品も一貫して「男という生き物」の強さと弱さ、曖昧さや頑固さが巧みに表現されていて、こんな映画を撮る監督とは一体どんな人物なのだろう?どんなやり方で作品を作り上げていくのだろう?という阪本監督に対する興味はつのる一方だった。

「豊川悦司氏と共演出来るなら考えてもいい」というのが監督のオファーに対する俺の答えだった。何を根拠にそんなことを言ったのかは自分でも定かではないが、結果的に豊川悦司との出逢いは今までの、そしてこれからの私の人生にとってかけがえのないものであり、彼の存在がこの映画音楽に与えた影響は多大であった。彼との友情の発展は物語上の関係(野と門谷)と同様にまさしくスリリングなものだった。この「新・仁義なき戦い」の撮影の記憶は彼との友情の経過そのものである。
豊川悦司は無言の人であるが、同時に音楽を発する人である。本当の意味で音楽を愛することのできる人間はパルスのように身体から音楽を発するものだ。音楽と演技、まったく異なるようで密接にあるそれぞれの分野で俺達はアウトサイダーであり、反逆者であり、ロマンチストであり、自分の関わった作品さえもシニカルに笑いとばせる変わり者同士だった。しかも年齢が同じ、さらには身長もほぼ同じという人間に巡り会う確率はかなり低い。

はじめて伝説の東映京都撮影所に『仁義なき戦いのテーマ』のデモテープを土産に陣中見舞いに訪れたのも記憶に新しい。通称太秦(うずまさ)と呼ばれる東映京都撮影所は数えきれないほどの日本の名画を生んだ伝説の撮影所である。控え室には『高倉健』を筆頭に数々の名優の名札が連なり、今もなお日本映画の良き時代を語り伝えている。その雰囲気はある種独特だ。休憩所には時代劇の衣装をまとった役者達が集まりコーヒーを飲んでいる。阪本組率いる「新・義なき戦い」一行はその中でも異彩を放っていた。ギラついた男たちが勝負の眼差しで闊歩するのである。しかしその眼差しは常に内へと向いており、男たちは紛れもなく自分自身と戦う為に京都にいた。阪本順治もその中のひとりであったはずだ。 「仁義なき戦い」というタイトルを背負うことになんのメリットもない。 あるのは恐ろしいまでのプレッシャーと男の本能だけである。
現場では門谷が指を詰めるシーンをリハーサルしていた。凄まじい緊張感がスタジオ中に溢れ、「えらいこと引き受けたな....」と内心呟いたのは事実。決して出演者と気軽に挨拶を交わすような雰囲気ではなかったので私は撮影が一段落するのを待ち、やがて現れた監督と音響室へ移動。「仁義なき戦いのテーマ」そして新たに書き下ろした「新・仁義なき戦い」、「BORN TO BE FREE」の三曲を聴いた。音楽に関しての監督からのリクエストは「オルガンを使わないこと」だけだった(監督はオルガンの音が生理的に嫌いで、よく冗談で「前世はオルガンだったんじゃないの?」などとからかったものだ)。監督の反応はすこぶる良く、かくして音楽制作は好スタートを切った。その後現場に戻った監督がラジカセで出演者とスタッフに聴かせてくれたそうで、そこに居合わせた志賀勝氏がラジカセに耳を寄せ「大ヒット間違いなしや!」と呟いたというエピソードを聞いて、私はとても嬉しかった。というのも志賀さんは深作版「仁義なき戦い」からの出演者であり、彼のこの作品に対する想いは我々ニュー・キャスト以上に熱きものであったはずだからだ。

ここで「私と映画音楽」と銘打って、私のずるところの「映画と音楽」の密接な関係について述べさせていただく。映画と音楽が幸せな結婚をしたとき、それは何ものにも勝る絶対的な力を発揮するのは皆さんも承知の事実だ。ではここで言う幸せな結婚とはなにか?それは映像からイメージする音と、絵からイメージする音の温度がひとつであること、と私は考える。映像にも音楽にも温度がある。真冬の雪山の映像に常夏の国の音楽が似合わないのは明らかに温度感の相違に他ならない。そしてこれはあくまでも個人的な解釈だが、あまり映像にあっている音楽もなんだか気持ちの悪いものだ。お涙頂戴のオーケストレーションが恋愛映画のクライマックスに絡んだりなんかすると、それだけで冷めてしまう。スクリーンが音を発している、と感じられるものこそ真の映画音楽であるということを私は数々の名作映画から学んできた。

この「新・義なき戦い」の音楽のテーマは「低温火傷」である。男たちのまいをいかに冷酷に、ヒリヒリと見せることができるか?というのが第一の目標だった。そしてもう一つ、音楽の流れを豊川演ずる門谷の心理に合わせて作ってみたかった。心の奥で常に愛憎と葛藤を繰り返すこのキャラクターは前記の低温火傷と合わせて大いに作曲魂をくすぐった。自分が出ているシーンに音をつけるのは逆にやりづらいものだということも白状しておこう。照れか、さもなくば自分のつたない演技を音楽で演出してしまいそうになるからだ。
今回の音楽制作は私が手掛けた最初の映画「S.E.サムライ・フィクション」 (中野裕之第一回監督作品)と同様、コンピューターと映像を同期させたシステムを基本に作られた。簡単に手順を説明すると、撮影中に何度かラッシュを観て監督と念入りに打ち合わせをし、音楽を挿入する場面を限定してゆく。そして最終編集が施された映像と、コンピューターの環境を同期させ、音を入れるカットの最初と最後のフレームの数値を入力する。 そしてさらに映像を何度も繰り返し観て、各シーンに合わせたBPM(テンポ)を設定する。ちょっとした目線の動きやカメラの動きのポイントにマーキングをして、そこにアクセントがくるように全体のリズムを決める。セリフのある部分はすべて音とぶつからないように計算する。物語の進行と人物の表情、カメラワークの意図に合わせてコード進行を決め、あとは通常のレコーディングの要領で音を重ねていく。仕上がった段階で映像と合わせ、また何度も観る。 音が多ければ躊躇なく削るし、足りなければ足す(前記の温度感とはここで言う音数にもあてはまる)。もちろん監督は隣に座って問題点を指摘するし(大部分は大阪特有のギャグを飛ばしているのだが...)、ストーリーの展開を損なわないのが一番大切である。
もうひとつの方法は映像を観ながらの即興演奏。ギターで、もしくは鍵盤で映像とジャムセッションをするのだ。この方法が一番スリルがあるし楽しい。門谷と栃野が車のウインドウ越しに目線の再会を果たすシーンや、村上淳演ずる鉄雄がコンビナートを背景にピストルをとりに歩くシーンなどはスクリーンを見つめながらギターを弾いたものだ。ざらついた感情を巧く表現出来たと思っている。
そして今回は私の10年来の友人である英国人サイモン・ヘイル氏にすべてのストリングスの編曲、指揮を依頼した。メールのやりとりでイメージの交換をして、ISDNによって英国から送ってもらった。便利な時代である。
すべての楽曲や効果音はエンジニアの今井邦彦氏によって劇場での効果を最大のものにするようドルビー・サラウンド・ミックスされた。 しかしこのサウンドトラック・アルバムは通常の2チャンネルでの鑑賞を楽しんでいただく為に、かの英国のアビーロード・スタジオにて全曲ミックスし直した。ちなみにマスタリングは同じくロンドンのイアン・クーパー氏の手によるものだ。すべてのプログラミングを担当してくれたのは岸利至氏。 彼らの協力なしにしてこの作品は生まれなかった。この場をお借りして改めて感謝の意を述べたい。

皆さんはこの映画を観てどんな感想をお持ちになるのだろう? 願わくば、野性のまま生きていくしかない男という生き物の性を、優しく愛しく見つめていただきたいし、その不条理な生きざまをとくと見届けていただきたい。男とは常にリスクを負って自分自身と勝負していないと死んでしまう哀しき生き物なのだ。

最後に一言。
このアルバムを長男の誕生祝いとして豊川悦司君に捧げる。 数十年後の彼がこの映画に登場する哀しくも熱き男たちのように、魂で生きていることを願って。

2000年10月10日 英国にて
布袋寅泰

この映画への出演と音楽を担当したことが布袋寅泰の音楽人生を大きく動かすことになった。この映画をみたクエンティン・タランティーノが自身の作品『KILL BILL』で「新・仁義なき戦いのテーマ」を使いたいとオファーしてきたのである。それなら新曲を書き下ろすという布袋サイドの提案を断りあくまでも「新・仁義なき戦いのテーマ」を使いたいということで、タイトルは「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」となった。これはクエンティン・タランティーノがつけたタイトルである。

このサウンドトラックはアルバム『fetish』と同時リリースされており、同年の全国ツアー『HOTEI ROCK THE FUTURE 2000-2001 FETISH』』ではこのサントラに収録されている、仁義なき戦いのテーマ、新・仁義なき戦いのテーマ、BORN TO BE FREEの3曲が演奏された。

余談だが、このサントラはわずか1日ほどの超短期間で作り上げたそうです。あと、現在、布袋バンドおよび布袋作品で欠かせない存在の岸利至は、このサントラ及びアルバム『fetish』からの参加である。

クレジット|新・仁義なき戦い。そしてその映画音楽

All tracks written & produced by TOMOYASU HOTEI
Except track-1 written by TOSHIAKI TSUSHIMA, track-7 by SIMON HALE

TOMOYASU HOTEL - Guitar / Bass / Keyboards
TOSHIYUKI KISHI - Programming / Audio Edit

YOICHI MURATA - Horn Arrangement / Trombone
TOSHIO ARAKI / MASAHIKO SUGASAKA - Trumpets

SIMON HALE - Orchestration & Orchestra Conduct on 7, 13, 17
Performed by LONDON SESSION ORCHESTRA
GAVYN WRIGHT - Orchestra Leader
STEVE PRICE - Orchestra Recording Engineer

BORN TO BE FREE

TOMOYASU HOTEI - Guitar / Vocals
MEL GAYNOR - Drums
TOMIO INOUE - Bass
KYON - Piano
TOSHIYUKI KISHI - Programming / Audio Edit

RYO TAGUCHI / KATSUMI ONISHI from "JET SETS" & RYUHEI SUGAWARA from "the autumn stone" - Backing Vocals

Recorded and Mixed by KUNIHIKO IMAI (OOROBEAT)

Assisted by SHINPEI YAMADA / MAMIKO KATAKURA (mixer's lab / On Air Azabu Studio)
CHRIS BOLSTER (Abbey Road Studio)

Mastered by IAN COOPER (Metropolis Mastering)

Appeared courtesy of
RYO TAGUCHI & KATSUMI ONISHI (JET SETS) / Astronotes Star Inc.
RYUHEI SUGAWARA (the autumn stone) / Astronotes Star Inc.
YOICHI MURATA (SOLID BRASS) / Victor Entertainment Inc.

Staff

A&R: TETSUYA ABE* SATOSHI HIROSE / SEICHI WATANABE**
Guitar Tech & Equipment: NAORU UCHIDA (LEO MUSIC)
Artist Management: TETSUYA ABE / MAIKO SUZUKI / AKIHIRO ODAJIMA / MIYUKI KOTAKA***
Public Relation: TOMONARI NEMOTO**
Virgin Domestic promotional staff**
Sales Promotion: SHIGETAKA HARATAKE**
Executive Producers: SENJI KASUYA*
MASAAKI SAITO / JUNYA NAKASONE**

*TOY BOX PUBLISHERS **TOSHIBA EMI ***IRc2 CORPORATION

Visual

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1978年生まれ。神奈川県川崎市育ち。
1992年にたまたま聴いた布袋さんのライブアルバムで衝撃を受け、一気にのめり込んでファン歴は30年以上。BOØWYもCOMPLEXもリアルタイムで聴いていない後追いファンです。ラジオ、雑誌、書籍くらいしか情報源はなかった1997年にインターネットに触れ当然のように布袋さん情報を求めたものの満足いくサイトがなかったので自分で発信することで情報を得ようと思い布袋寅泰ファン向けの情報ページ「CYBERSPACE」を開設。名前はSSGの歌詞に影響されたわけではありません。SSGより前です。

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